知的資産とは
知的資産とは
「知的資産」と聞くと、特許などの「知的財産」をイメージするかもしれません。
しかし、「知的資産」は特許などの「知的財産権」だけではなく、それらを含むもっと大きな概念のことを表します。
具体的には、企業が大事にしている経営理念や人材、組織力、技術、独自ノウハウ、顧客・仕入先との強固なネットワークなど財務諸表に表れない経営資源を総じて「知的資産」と呼んでいます。
社長ヒアリングで、「うちの財産は、従業員です」、「うちの財産は、この顧客リストです」、「うちの財産は、このシステムです」などの言葉を耳にしますが、経営を支えている要因という意味では「知的資産」というより、「経営財産」と呼んでも呼んでも良いかもしれません。
企業の財産は、財務諸表で数値化されているものだけではないことに気づくことが必要です。
「知的資産」は、その企業の本質的な「価値・強み」であり、企業競争力の源泉です。また、円滑な事業承継を実現するためにも、自社の強みである「知的資産」を整理することが重要です。
知的資産経営とは
それぞれの会社の強み(知的資産)をしっかりと把握し、経営に活かすことで会社の価値向上に結びつけることが「知的資産経営」です。財務諸表で目にする数値は、事業年度にどれだけ知的資産を活用できたかという結果にすぎません。
事業年度ごとの業績も大事ですが、企業経営はエンドレスな活動(ゴーイング・コンサーん)ですから、その先につながる「知的資産」の磨き上げや活用などのストーリーを描くことができるようになることが重要です。
企業が勝ち残っていくためには、差別化による競争優位の源泉を確保することが必要ですが、「自社の何が源泉になるのか」、「どのようにしたら、磨かれ光るのか」を見つけ出し、ストーリーの中で実行していくことが重要です。
実行の伴わない計画は、まったく意味がありません。
知的資産経営報告書とは
「知的資産経営報告書」とは、企業が保有する、上記に記載したような企業固有の技術、ノウハウ、人材など重要な「知的資産」の認識・評価を行い、それらをどのように活用して企業の価値創造につなげていくかをストーリーの中で示す報告書です。
過去から現在における企業の価値創造プロセス以外に、 将来に向けて中期的な価値創造プロセスを明確にすることで、企業の価値創造のストーリーを伝えるためのツールです。
ステークホルダー(顧客、金融機関、取引先、従業員等)に対して、財務諸表に加え、定性的な非財務の情報(自社の持つ知的資産の優位性)により自社の魅力を伝えることが重要になってきています。
特に、金融庁の金融政策方針の転換で、金融機関は企業の事業性を評価することが求められるようになりました。
筆者は、HP上で知的資産経営報告書を開示する必要ないと考えています。しかし、金融機関に対しては、知的資産経営報告書などによって如何に定性的な非財務の情報を伝えられるかが、ますます重要な時代になってきていると考えています。
経済産業省では、「知的資産経営を開示・評価する意義」として、下記のような点を経済産業省のHP上で指摘しています。
「知的資産経営に関する情報開示」によって、開示する側の企業にとっては、例えば以下のようなメリットがあります
(1)企業価値が増大する
ステークホルダーからの適切な評価を得ることができるので、企業が持つ実力を正しく評価してもらえます。
知的資産経営に関する情報開示によって、市場における過小評価が解消されれば被買収リスクも低くなるでしょう。
(2)経営資源が最適に配分される
情報開示のプロセスの中で、自社の知的資産を再認識することで、個々の企業の内部において価値創造につながる経営資源(人材、資金など)への最適な配分をもたらします。
つまり、企業ごとに固有の価値創造の方法に経営資源を集中投資することが可能となります。
(3)資金調達が容易になる
将来価値に対する確度や企業の信頼を高めることにより、幅広い投資家や金融機関からの評価を得て、資金調達が有利になります。
また、特に情報開示の機会が少ない中小・ベンチャー企業にとっては、知的資産経営報告を通じて自らの潜在力・成長性を銀行やベンチャーファンドに示すことができます。
(4)従業員のモチベーションが向上する
従業員が自社の強みや知的資産経営の内容を正確に認識することで、個人の仕事が自社の将来価値にどのように寄与するかが明確になるため、士気が向上します。
今後、団塊の世代の大量退職など、労働市場において人材の確保が困難となるとみられていますが、知的資産経営報告によって求職者に自社の強み・魅力をアピールし、優秀な人材の確保につなげることもできます。
(5)知的資産への再投資が可能となる
企業価値の増大や資金調達が容易になることで、更なる知的資産経営の取り組みや強みとなる知的資産への投資が増大して、知的資産や価値創造のメカニズムのいっそうの強化、次なる情報開示につながります。
経験を重ねることで知的資産経営報告の内容・方法も洗練されていき、ステークホルダーの理解・信頼感も高まっていきます。
知的資産経営に関する情報開示が進むと、開示する側の企業だけでなく、開示内容を評価するアナリストや投資家等の「企業評価者」にとっても複数のメリットがあります
(1)企業価値の分析精度が高まる
従来あまり詳しく評価されてこなかった知的資産経営の評価、つまり企業が中長期的にどのように将来の価値を生み出すのかという分析を行うことで、企業の本質的な価値を掴み、アナリストや投資家の分析精度は向上します。
(2)企業のリスクを評価できる
これまで、企業の経営に大きな影響を及ぼす「リスク情報」に関しては、開示されている定性情報の中でもとくに見えにくい部分でした。
企業の知的資産経営の開示内容を分析することで、企業がどのようなことに取り組み、逆に取り組んでいないのかを明確化でき、それらをたとえば業界内で比較することによって、企業の将来の事業リスクが鮮明に見えてきます。
リスクが将来的に顕在化する場合の業績を予測することが可能となれば、(1)と同様に、企業分析の精度が高まります。
(3)成長性の高い企業を見抜くことができる
知的資産経営に関する情報開示では短期的な利益等の情報ではなく、中長期的な企業価値を高めるための価値創造のプロセスが示されます。
投資家などの企業評価者にとっては、将来業績の予測に重要な影響を与える企業の先行投資に関する情報を掴むことができるため、企業の成長性を的確に見極めることができます。
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