(5)有価証券報告書などから何を読み解く
(5)有価証券報告書などから何を読み解く
Ⅶ 有価証券報告書、事業報告の活用
これまでみてきたように、有価証券報告書には、事業の種類別セグメント別の営業成績や設備投資計画、ビジネス上のリスクや課題、対処の状況など事業の大枠が掴める情報や財務情報が記載されていました。また、事業報告では、社長のメッセージ、今後の事業計画などが株主に向けて発せられています。これら有価証券報告書や事業報告を分析することで、株式投資目的以外に自社の経営に役立つ情報を得ることが可能となります。
1.情報収集の目的や必要とする情報の明確化
まず、何のための情報収集なのかその目的と必要な情報を明確にします。具体的には、(1)販売拡大のために必要な販売先ニーズを探索するための販売先の事業計画や設備投資計画情報、(2)商品・製品購入資金力の有無を判断するための業績動向やキャッシュ・フローの状況などの財務情報、(3)製品開発のため取引先企業グループが力を入れている領域の情報、(4)現在の製品取引の継続状況を判断するための代替品の情報、(5)販売代金の回収可能性を判断するための財務情報など、「何のためのどのような情報か」という点を明確にします。
2.同業企業のグルーピング化と事業戦略や業界の成長性、課題などの整理
個別企業グループの有価証券報告書や事業報告だけではなく、同じ業界に属する複数企業の有価証券報告書や事業報告を整理、分析することで、その会社、業界を取り巻く環境を客観的に把握することができます。
取引先企業が上場会社ではなく、その下請け・孫請け業者であっても、その系列の上場会社の事業戦略を読み取ることで、自社の商品・製品が継続して販売可能なのか、受注が減少するのかなどを類推することが可能です。
また、顧客ニーズが把握できると、その企業の事業戦略に合致した有効な製品開発や提案も可能になります。「待ちの営業」や「御用聞き営業」から「提案型営業」へ転換するためにも、販売先や新規見込み先企業(その親会社にあたる上場会社)の事業戦略や事業方針を整理、分析してみて下さい。
取引先が上場会社と全く関係がない場合でも、自社の事業領域に近い上場会社の有価証券報告書や事業報告で情報を整理、分析することで自社の事業計画立案のヒントが掴めます。上場会社やそのグループ会社が自社の事業領域に新規参入してくる場合、事業別セグメント別情報から、「自社がターゲットとしている市場規模・成長性に魅力があるが、今後競合が激化する。競合会社の事業戦略は〇〇〇。当社としては△△△で差別化を図る。あるいは、撤退する。」など自社の事業戦略の方向性のヒントが掴めるかもしれません。
3.SWOT分析の活用
有価証券報告書や事業報告から抽出できた情報を、S(強み)、W(弱み)、O(事業機会)、T(事業リスク)の4つの切り口で整理してみましょう。S(強み)やW(弱み)はその企業やそのグループが競合に対して強み、弱みと捉えている項目です。
具体的には、有価証券報告書や事業報告からマクロ情報や業界情報、投資計画や投資キャッシュ・フローなど、自社に対する事業機会や事業リスクになる点を抽出してみます。
例えば、取引先の親会社の製品開発動向や事業戦略から、当社の製品が近い将来新製品に代替されると想定された場合事業リスクとなります。当社では新製品開発や新市場開拓が必須となります。一方、投資計画があり、資金回収に問題のない会社であれば、ビジネスチャンスが広がります。
投資計画や投資キャッシュ・フローを分析することで、どの分野に重点的に投資しているのか把握できますし、財務内容から販売した場合の回収リスクの有無が判断できます。自社の製品・サービスがその会社の事業の方向性、ニーズに合致しているのであれば、営業を強化すべきと意思決定できます。
有価証券報告書や事業報告を入手して、自社の経営に役立つ情報の収集・活用にチャレンジしてみて下さい。
ご依頼やご相談、資料請求は下記よりお願いいたします。
TEL:03-6447-2238 (月〜金曜日 10:00 〜 17:00)
ご依頼やご相談、資料請求は下記よりお願いいたします。
TEL:03-6447-2238
(月〜金曜日 10:00 〜 17:00)